(続き)
1960年代の録音も相対的意味で悪さは分ると思うが、
それも、1963年くらいを挟んで、前と後では極端に音が違う。
60年代半ばからマルチトラック録音が、だんだんと標準になってくるので、
その前との相対的意味で音は良くなっている。
1950年代は音はSN比という意味では悪いが、但し、アンプ、マイクなどが真空管であったりするので、
独特な中域があり、これをして「音がよい」という人もいる。
今でこそPCM(デジタル録音)は素人でも当然だが、
1980年代後半から1990年代初めの頃のデジタルになりたての時には相当にひどい録音が沢山あった。
SN比はデジタルだからいいのだが、アナログ機器からデジタル機器に移ったばかりで、
エンジニアが慣れておらず、それまでのアナログの方法論と何が同じでよく、
何を変えればよいのか分っていない所が沢山あったわけだ。
1950年代後半に沢山音を重ねることで有名なのは、フィルスペクターだが、彼のやり方は、基本的には一発録音に近いので、
一度に何台ものギター、ピアノ等々を集めて、それを一発録音でとる。
それを2CHマルチと言えば聞こえがいいが、ほとんどラジカセからその録音したものを
再生して、その音をカラオケにして楽器、歌を演奏して、もう一台のラジカセで録音するような感じの機材なので、
当然SN比も悪いし、高域、低域を残しておくのもまた難しい。(それでもあれを作ったというのはすごいのだが)。
但し、1970年代くらいまでは、基本的にフルレンジのスピーカー(中域専用)だけで再生することを念頭に入れて作っているので、
それほど「ひどい音」と感じている人もいあなかったはず。
シュープリームスなどは、当時一番の宣伝媒体であったカーラジオで流れたときに一番いい音になることを目標にして、
マスタリングしていたので、相当にドンシャリな音にしている(今のオーディオで聞くとドンシャリというより高域だけみたいな音)。
要するに、当時のカーラジオの特性を考えて作られた音ということ。
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