「良い音の出し方」を具体的に説明するのは難しいですが、 
 演奏による「音の違い」について説明しましょう。   
 まず、数時間以上誰も手を触れていないピアノの単音と、 
 少しでも鳴った後のピアノの単音は違う音です。 
 ピアノは単音を弾いても他の弦が振動しますし、 
 弦のみならず、響板その他楽器構造そのものも振動します。 
 それらすべてを含めてピアノという楽器が成立しています。   
 次に、1指、3指、5指で3音を弾く場合を考えてみましょう。 
 人の手は機械ではありませんので、3音の鍵盤を全く同一の 
 物理的エネルギーによって弾くことはかなり難しいと言えます。 
 そうなるとそれぞれの鍵盤に対応する音の組み合わせによって、 
 各音は当該弦以外の振動からのの影響度合いが異なります。 
 それによって様々な響き方が生まれます。 
 もちろん演奏者の違いによっても物理的にも異なる音が 
 鳴っていることになります。   
 さらに人の各指は時間的に全く同一にハンマーを動作させている、 
 などということはありえません。 
 複数音を弾く場合、微妙に時間的なズレが生ずることは避けられません。 
 そうなるとタッチの強弱同様、異なった響き方が生じます。   
 つまり、仮に同一人であっても、同じピアノで物理的に全く同一の 
 和音を繰り返し弾き続けることは、厳密に言えばほぼ不可能なのです。
 返信する